1.前立腺癌細胞株におけるトロンビン受容体(ThR)の発現 まず、前立腺癌のCell Lineを用いてThR蛋白およびmRNAの発現を解析した その結果immunoblotではDU145細胞で弱い発現が確認されたが陽性コントロールのMDA-MB231(浸潤性乳癌細胞株)に比較しても弱い発現であった。RT-PCRでは同様にDU-145細胞と今回はPC-3細胞にもわずかにmRNAの発現が確認された。また、いずれの実験系においてもLNCap細胞にはThRの発現は認められなかった。即ち、乳癌の場合と同様に前立腺癌においても転移・浸潤傾向の強い細胞でThRの発現が増加している可能性が考えられた。この点についてはさらに再現性と定量性について再検中である。今後、in vitroにおいては、上記の系でThRの存在が確認されたDU-145とPC-3細胞についてトロンビンまたはアゴニストペプチドを添加してトランズウエルを用いての細胞運動性への効果を検討したい。また、これら前立腺癌細胞におけるThRのシグナル伝達経路に関しても、既知の経路と比較しながら解析してみる予定である。 2.前立腺癌組織中でのThR発現 インフォームドコンセントの上採取した前立腺癌生検組織中のThRについてモノクローナル抗体を用いた免疫組織染色を施行した。正常前立腺組織でも血管系での発現が確認されるようで、癌組織中での詳細な分布は明瞭とは言い難いが、多発性骨転移を有する数症例で癌組織中でのimmunoreactivityを認めた。まだ、症例数が少なく、他の因子との関連等については今後検討する予定である。
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