研究概要 |
早産期前期破水発症の予知に有用な因子について前方視的に検討を行った.[方法]同意の得られた妊娠20週から34週未満の未破水の妊婦を対象とし,早産期前期破水に至った群と正期産の群について,背景因子,臨床所見ならびに頚管分泌物検体中のinterleukin(IL)-1α,IL-1β,IL-6,IL-8,顆粒球エラスターゼ,癌胎児性フィブロネクチン,matrix metalloproteinase(MMP)-1,MMP-2,MMP-9,tissue inhibitors of matrix metalloproteinase (TIMP)-1,TIMP-2をEIA法により濃度測定し,比較検討した.統計学的解析には,Fisherの直接法,t-検定,Mann-WhitneyのU検定,多重ロジスティック回帰解析を用い,危険率0.05未満を有意とした.receiver operator characteristic(ROC)解析により,PPROM発症予知における頚管分泌物中の各物質濃度のカットオフ値設定を試みた.[成績]1)前期化学破水症例が早産期前期破水にいたった頻度は,対照群に比べ有意に高率であり,早産期前期破水を発症するリスクをもつこと,さらに前期化学破水発症には,頚管分泌物中のIL-6の高値と頚管長の短縮がリスク因子となることが示唆された.2)早産期前期破水発症の予知に有用な因子として,単変量解析では頚管長短縮,ファネリング(内子宮口の開大),ビショップスコア高値,IL-6高値の4項目があげられ,これらについて多重ロジスティック回帰解析を行った結果,頚管長短縮とIL-6高値が選択された.ROC解析により,IL-6濃度ならびに頚管長のカットオフ値は,それぞれ240pg/ml,28mmと設定され,それらの感度は,それぞれ83.3%,66.7%,特異度は,それぞれ81.0%,87.3%であった.[結論]頚管分泌物中のIL-6の高値と頚管長の短縮が,早産期前期破水発症の独立した予知因子である可能性が強く示唆され,本研究の臨床的意義を認めた.
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