研究概要 |
昨年から本年にかけて研究者が試みていたヒトLdb1のcDNAおよびgenomic DNAの塩基配列の報告が異なる3つのグループから相次いで報告された。いずれも研究者がクローニングし報告したマウスにおける塩基配列と高いホモロジーを示しており、ヒトLdb1遺伝子と考えられる。そこでこれらの報告された遺伝子配列を利用して翌年度以降に解析予定であった癌細胞でのLdb1遺伝子の発現の解析を行った。検体には子宮体癌株(Ishikawa,Hec 1A、Hec1B,KLE,AN3CA)5株および卵巣癌細胞株(kuramochi,CAOV3)2株を用いた。正常対照として婦人科疾患での手術検体より患者の同意を得た後正常部分の子宮内膜および卵巣より組織を採取し用いた。細胞株および正常対照ともにISOGENにてtotal RNAを回収しこれを鋳型にしてSuperscriptを用いて逆転写を行いcDNAを作成した。 sequence detaのマウスとのホモロジーからexon-intron boundaryを推測してexon8からexon9および、exon9からexon10にプライマーを設定しRT-PCRを行った。PCRの回数をプラトーに達する前に終了させbeta-actinを内部標準にしてLdb1のそれぞれの細胞株および正常組織での発現量を比較した。この結果、子宮体癌細胞株では正常に比較し発現量に大きな差は認めなかった。しかし卵巣癌細胞株において、検討した2株とも正常に比較し発現量の増強が認められた。よって今後卵巣癌細胞株を中心にcompetitive RT-PCRを用いてより正確な比較を行う予定である。遺伝子診断の可能性を前提に、患者組織を用いて同様の結果が得られるかも検討する。 また、このような発現の増強が癌化の原因なのか結果なのかを遺伝子組み替え技術を用いて癌細胞株で検討する予定である。
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