研究概要 |
本研究は将来のHPVワクチンの開発を念願に置いて、子宮頚癌から最も高率に検出されるHPV16型に対するヒトの免疫応答について解析を進めている。本年度は以下の成果を得て、発表した。 1.2つのタイプのヘルパーT細胞(Th)のなかで、主に細胞性免疫を誘導するTh1はIgG2優位の抗体産出を促進し、主に液性免疫を誘導するTh2はIgG1優位の抗体産出を誘導する。HPV感染に対するヒトの免疫応答を調べるために、HPV DNA陰性かつ抗体陽性の健常人17例、HPV16型DNA陽性でなおかつ抗体陽性のCIN29例、子宮頚癌20例を対象に抗HPV16L1抗体サブクラス(IgG1,IgG2)を調べた。健常人女性の94%、CIN患者の48%がIgG2優位であったのに対して、頚癌患者では95%がIgG1優位であった(p<0.001)。IgG2優位の免疫応答はTh1型のサイトカイン産生を意味するので、Th1型サイトカインによって誘導される細胞性免疫がHPVの感染制御に有効で、IgG1優位の頚癌患者では適切な免疫応答が誘導されず発癌に至った可能性が示唆される。また、IgG2優位のCIN患者ではIgG1優位のCIN患者と比較して有意にCIN病変が消失しやすく(p<0.05)CIN患者における抗L1抗体のIgG1/IgG2バランスはCIN病変の進行・消失を予知するマーカーとなる可能性がある。 2.HPVの主要粒子蛋白L1を発現するプラスミドDNA(DNAワクチン)をマウスに直接接種して得られた抗体はHPV粒子の立体構造を認識し型特異的に反応すると同時に、HPV感染を防ぐ中和活性を示した。このことからHPVL1蛋白を発現するDNAワクチンはHPV感染を予防するワクチンとして有用であると考えられた。
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