1 LH/hCG受容体を持つヒト顆粒膜黄体細胞株の樹立 (1)上記目的にてLH/hCG受容体遺伝子、Ha-ras遺伝子、p53温度感受性変異プラスミド、をそれぞれ組み合わせを変えヒト顆粒膜初代培養細胞に導入した。株化に成功した細胞の特徴を調べたところ、いずれもcAMPに反応しプロゲステロン(p4)を産生したがLH/hCGには反応しなかった。 (2)既に我々が樹立したヒト顆粒膜細胞株HO-23(SV40 DNA、Ha-ras遺伝子、p53温度感受性変異プラスミドを導入)にLH/hCG受容体遺伝子の導入を試みたが導入効率は1%以下と低く、目的とする細胞株の樹立には至らなかった。 (3)上記(1)で得られた細胞株のうち一部はFSHに反応しP4を産生することがわかった。FSH反応株(HRP53-10)は32℃で培養されるとHO-23の場合と同様p53の活性化によりアポトーシスを起こした。HRP53-10はSV40 DNAという異種DNAを導入することなく株化し、しかもFSHに反応するという特徴を持つ点でHO-23よりも一歩ヒト生体内顆粒膜細胞に近づいた細胞株と考えられる。以後の実験にはHO-23とHRP53-10を供する。 2 細胞株を用いたヒト顆粒膜細胞のステロイド産生調節機構の解析 HO-23とHRP53-10を同量のcAMPで刺激した場合、P4産生量はHRP53-10の方が低かった。HO-23の場合、ステロイド産生に関わる重要な細胞内シグナルのStAR(steroidogenic acute regulatory protein)とP450sccステロイド代謝酵素は刺激後それぞれ2-4、4-8時間で発現が誘導された。HRP53-10の場合については現在追跡中である。HRP53-10がFSH反応性を獲得した機序については不明であるが重要な意義を持つので今後研究を進めていく必要がある。
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