研究概要 |
1,ヒト子宮内膜癌、子宮頚癌および卵巣癌の転移巣においてsex hormone-binding globulin(SHBG)wild-type mRNAの他にステロイド結合部位をコードしていると考えられているexon 7が欠失したSHBG exon 7 splicing variant mRNAが発現しており、原発巣と比較して転移巣ではSHBG variant/wild-type mRNA比が高いもの、wild-typeおよびvariant mRNAがともに検出されないものがほとんど(90%)であり、婦人科癌においては原発巣と比較して転移巣におけるホルモン依存性を変化させていると推測された。 2,ヒト正常卵巣および卵巣癌においてcorticosteroid-binding globulin(CBG)mRNAの発現が認められ、正常卵巣と比較して卵巣癌の38%においてCBG mRNAの高発現が認められた。つまり、正常卵巣のみならず卵巣癌においてもCBGに関連したステロイド作用機構が保持されており、また卵巣癌の中には細胞内CBG発現の制御機構が変化しているものがあると推察された。また、ヒト胎盤においてもCBG mRNAおよびその蛋白が発現しており、妊娠中のコルチコステロイドやプロゲステロンなどのホルモン作用機構に影響を与えていると考えられた。 3,ヒト黄体において、エストロゲンレセプターα(ERα)のみならず近年発見されたもう一つのサブタイプであるERβ mRNAが発現しており、ERαと協同的に働いて黄体のステロイド作用の制御に関係していると考えられ、その発現レベルは分泌期初期・中期よりも後期に低く、黄体の機能的life-spanとも関連していると考えられた。また、ヒト黄体におけるSHBG,CBG mRNAと血清ステロイドホルモン値(エストロゲン、プロゲステロン)との相関が認められ、黄体におけるSHBG,CBG合成は性ステロイドによって調節されており、さらにSHBG,CBGはこれら性ステロイドとの相互作用により黄体におけるステロイド作用機構に関連していることが推察された。
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