研究概要 |
1.ヒト胎盤組織およびヒト胎盤細胞株においてステロイド結合蛋白であるcorticosteroid-binding globulin(CBG)mRNAの発現が認められ、さらに胎盤細胞株においてCBG蛋白の発現を認めた。胎盤組織におけるCBG mRNAおよび蛋白はsyncitiotrophoblastに局在していた。これらの結果より、ヒト胎盤においてCBGが産生されており、妊娠中のcorticosteroidやprogesteroneなどのホルモン作用を修飾する可能性が考えられた。 2.ヒト正常子宮内膜および卵巣子宮内膜症組織においてprogesterone receptor(PR)のisoformであるPR-AおよびPR-B mRNAの発現が認められ、正常子宮内膜に比べ卵巣子宮内膜症組織の50%でPR-B/PR-AB mRNA比が高値を示した。また、両組織においてPR-B/PR-AB mRNA比は月経周期で変動を認められなかった。この結果より、子宮内膜症組織ではPR-AおよびPR-Bの発現が変化しており、それによってプロゲスチン作用の制御機構に異常を来しており、ひいては子宮内膜症における性ステロイド感受性の異常に関連している可能性が推察された。 3.ヒト子宮内膜癌組織において、PR wild-type mRNAに加えて、exon-delated PR variant mRNAの発現が認められた。exon4、exon6、exon3,4-deleted PR mRNAはすべての症例において確認でき、exon5,6、exon4,5,6、exon3,4,5,6-deleted PR mRNAは症例によっては、認められないものがあり、高分化型・中分化型と比較して低分化型にその傾向が強かった。この結果から、ヒト子宮内膜癌において様々なexon-delated PR variant mRNAがwild-type mRNAとともに存在しており、それらのPR variant mRNAから翻訳されたvariant proteinはwild-typeのプロゲスチン作用に変化や修飾を与えていると推察された。またvariant mRNAの発現は腫瘍の分化度と関連する可能性が示唆された。
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