1 子宮頚癌および子宮頚部上皮内腫瘍病変におけるAminopeptidaseAの発現と意義 Aminopeptidase A(APA)はAngiotensin-II(A-II)を基質とする細胞表面酵素である。子宮頚部腫瘍におけるAPAの発現を検討するため、子宮頚部上皮内腫瘍(CIN)14例、子宮頚部扁平上皮癌23例の組織検体を用いて免疫組織染色を行った。APAの発現は正常頚部扁平上皮では基底細胞層に限局していたが、CINではdysplastic cellに発現し、low gradeからhigh gradeへと病変進行に伴い発現の増加をみた。浸潤癌では23例中18例にAPA発現を認めた。細胞増殖の指標であるPCNA陽性細胞の比率はAPAの発現レベルと相関した。また浸潤癌7例で全例A-II receptorの発現を認めた。以上よりAPAは子宮頚部扁平上皮における悪性転化や病変進行に伴い発現が増加し、これらの過程において調節的役割を果たしていると考えられた。 2 絨毛性腫瘍におけるAPAの発現と意義 次にAPAの絨毛性腫瘍における発現と局在を検討した。6種の絨毛癌細胞株におけるAPAの発現をFACS、WesternBlotにて解析し、酵素活性を合成基質を用いて測定した。絨毛性疾患組織検体(絨毛癌8、侵入奇胎4、胞状奇胎6)を用いて免疫組織染色を施行した。APAはhCG分泌量の低い絨毛癌細胞株に発現し、高hCG分泌の2株は発現を欠如した。各細胞株におけるAPAの活性は蛋白レベルと相関し、特異的インヒビターにより90%以上抑制された。組織切片では絨毛癌、奇胎においてPAPは未分化なcytotrophoblasticcellに局在し、正常胎盤に比して発現量は増加していた。 以上より絨毛性腫瘍においてもAPAが存在し、特異的な生理活性ペプチドを分解して、細胞増殖、分化、hCG分泌などに関与すると推察される。
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