1.マウス胚-子宮内膜間質細胞共培養実験系を用いた胚依存性子宮内膜分化および子宮内膜間質細胞依存性胚発育の解析;ヒト体外受精胚移植法が臨床応用されてからおよそ20年が経過し、現在では本法により世界で毎年2万人以上の児が誕生している。しかしその治療効率はいまなお低く、胚移植あたりの妊娠率はおよそ20〜30%、挙児率も20〜25%程度と低率にとどまっている。現在、着床に関するより深い理解が求められ、またより効率の良いヒト胚移植法を開発する事が急務となっている。治療効率の改善を妨げている最大の要因は着床率が低いことで、この最大の原因として着床機構の生物学が充分に解析されていない為と考えられる。われわれはすでにマウスにおいて胚一子宮内膜間質細胞共培養系を確立し、胚による子宮内膜間質細胞分化制御機構、および子宮内膜間質細胞脱落膜化による胚発育促進機構の存在を明らかにしているが、本研究において本実験系を用いて、マウス初期胚により誘導される子宮内膜間質細胞遺伝子をcDNAサブトラクション法を用いておこない、いくつかのクローン(未知のクローンを含む。現在解析中)がとれてきたが、そのなかにプロラクチンがあることがわかった。この誘導は初期胚から分泌される、プロゲステロン以外の液性因子によることもわかってきた。現在これらの因子について実体を明らかにしつつある。 2.マウス子宮内膜内胚移植および子宮腔内胚移植実験系を用いた胚による子宮内膜分化制御機構の形態学的・分子生物学的解析;われわれの教室ではすでに、マウスにおいて胚移植法を用いた着床成績の解析で、胚の存在により、子宮内膜の胚受容能が向上し、子宮内膜間質細胞のPCNA発現が亢進することを明らかにしているが、マウス子宮内膜内胚移植をおこない、その凍結切片をもちいてマウスProlactin、IGFBPsなどについて胚移植前後でin situ hybridizationをおこなっており、その発現様式を明らかにした。
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