本研究は、今日日常診察として広く行われるようになったヒト体外受精・胚移植において、依然低率である着床率を改善することによって、治療成績即ち、妊娠率の向上を目指すものである。現在の子宮内への胚移植は4〜8細胞期という着床には至適と言いがたい時期に行われており、着床至適である胚盤胞までの体外培養を効率よく行うため、ヒト単核球と胚との共培養法の検討を行うものである。 現在まで、基礎的研究としてヒト単核球を末梢血より分離・採取した後、マウス初期胚培養系においていわゆる胚のfeeder layerとして培養皿底面に付着させ、マウス胚と共培養を行いその胚発育促進効果について検討した。マウス胚発生では、特定の系では2細胞期の体外培養での胚発育が停止することが知られているが、共培養法によりこの胚発育停止現象が一部解除されることが確認された。また、胚盤胞への発生率においても、共培養法が有用であることが明らかとなった。 今後は、これまでのマウス胚における基礎的検討から、ひと体外受精・胚移植への臨床応用を予定している。即ち、当院における過去の体外受精・胚移植治療例において、移植胚は形態学的良好胚であってが妊娠に至らなかった、いわゆる着床不全と考えられる症例を選択し、充分なインフォームドコンセントを行い、患者本人末梢血より分離した末梢血単核球と、受精卵との共培養を行って、胚盤胞までの体外胚培養、胚盤胞期での子宮内胚移植を行い、着床率および臨床成績を検討する予定である。
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