研究概要 |
子宮内膜は増殖期、分泌期、月経期のサイクルを繰り返している。また妊娠が成立すると脱落膜化し、胎児との接点となる。正常子宮内膜には子宮内膜上皮細胞、子宮内膜間質細胞、炎症細胞などの細胞が混在しており、月経に伴う内分泌学的および形態学的変化は、卵巣から分泌されるステロイドホルモンの作用に加え、局所におけるこれらの細胞の相互作用により、修飾されているさらに妊娠時には、胎児成分である絨毛細胞が子宮内膜に湿潤する。また脱落膜化が起こると、マクロファージやリンパ球が子宮内膜に湿潤する。正常月経周期および妊娠に伴う局所の急激な変化には、種々のサイトカインや増殖因子を介する細胞間相互作用が重要な役割をすると考えられるが、現時点ではそのごく一部しか解明されていない。我々は正常子宮内膜間質細胞の培養系を確立し、子宮内膜間質細胞のサイトカイン産生調節について検討してきた。本研究では免疫反応を制御する作用を有するサイトカインに着目し、子宮内膜間質細胞のサイトカイン産生に及ぼす効果について検討を行なった。 本年度の研究では、まず子宮内膜間質細胞がRANTES(regulated upon activation,normal T cell expressed and secreted)を産生することをELISA法により確認した。このRANTESの産生は無刺激の状態では認められず、IL-1β、TNF-α、LPSの刺激により、濃度依存性、時間依存性に産生が誘導された。さらにinterferon-γはTNF-α、LPS刺激によるRANTESの産生を増強した。またIL-4、IL-10はTNF-α刺激によるRANTESの産生を抑制した。 さらにnorthern法により、RANTES遺伝子の発現について検討したところ、遺伝子レベルでもELISAの結果と同様の結果が得られた。以上の研究成果はMolecular Human Reproductionに掲載予定である。 本研究をさらに進めることにより、子宮内膜におけるサイトカインネットワークの仕組みが明らかになると考えられる。
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