目的:慢性低酸素状態下の胎児は、大脳や心臓、副腎といった生命維持に関する臓器の血流が増加し、腎臓や消化管、骨格筋などの血流が減少する、いわゆる血流再分配がよく認められる。本研究は、胎児持続酸素刺激中上昇する、Endothelin-1(ET-1)およびAtrial natriuretic peptide(ANP)の胎仔血流再分配への関与を確かめることを目的とした。 方法:在胎125日前後のサフォーク種妊娠羊13頭を用いて慢性胎仔実験モデルを作製し、術後2日以上経過した後、胎仔頚静脈よりET-1(5ng/Kg/min)(n=6)またはANP(0.3μg/Kg/min)(n=7)を1時間持続投与した。胎仔各臓器の血流量はcolored microsphere法(TRITON社製DYE-TRAK)により測定した。 結果:ET-1投与(n=6)により、脳血流は212±61(mL/100g/min.)から239±74へ13%増加した。また、心臓は205±60から267±78へと30%増加した。しかし、肺では約40%、副腎では約39%、腸管では約38%、腎臓では約44%減少した。一方、ANP投与(n=7)により、脳血流は191±72(mL/100g/min.)から287±140へ50%増加した。心臓は198±75から260±124へと31%増加した。その他、副腎では58%、腎臓では約18%増加した。しかし、肺では371±142から255±206へと31%減少、腸管では約12%、骨格筋では約7%減少した。 結論:ET-1投与によりvital organである脳、心臓での血流量が増加したが、それ以外の臓器では減少した。一方、ANP投与では肺、腸管、骨格筋の血流量増加を認めたが、特に脳、心臓、副腎の増加が著しかった。ET-1、ANPどちらもいわゆるVital Organの血流量増加を認めたが、非Vital Organへの反応は異なる可能性が示唆された。
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