当大学附属病院産科婦人科において、子宮頸癌の治療目的で手術または生検にて得られた子宮頸癌病変を用い、進行期や組織型によるアポトーシスの差異についてDNA3'末端標識後オートラジオグラフィーおよびIn situ DNA3'末端標識法により検討した。さらに免疫組織化学的手法を用いてアポトーシス調節因子であるBcl-2およびBax蛋白の発現についても検討した。その結果、オートラジオグラフィーによる解析から、DNA ladderingは正常子宮膣部および扁平上皮癌ではほとんど認められなかったが、腺癌においては、DNA ladderingが明らかに認められ、In situ法による解析においても、DNA断片化細胞が腺癌で多数認められた。またBcl-2の発現は、扁平上皮癌、腺癌ともにほとんど認めなかったが、Bax蛋白は腺癌でのみ強く発現を認めた。次に、子宮頸部扁平上皮癌における放射線治療とアポトーシスの関係について検討した結果、オートラジオグラフィーによる解析から、治療前にはほとんど認められなかったDNA ladderingが、放射線量900cGyと1980cGyで明らかに認められた。しかし3960cGyと6300cGyでは再びほとんど認められなくなった。In situ法による解析においても、DNA断片化細胞が900cGyをピークとして有意に増加したが以後漸減した。Bcl-2の発現は、放射線治療の影響をほとんど受けず免疫反応は認めなかったが、Bax蛋白はアポトーシスの変化とほぼ一致して、900cGyと1980cGyで免疫反応の増強が認められた。以上の結果、子宮頚部扁平上皮癌に比べて子宮頸部腺癌では高頻度にアポトーシスが認められること、放射線治療によりアポトーシスが一時的に増加することが判明し、しかも、そのアポトーシス変化にはBax蛋白が関与している可能性が示唆された。なお、以上の結果は、11.研究発表のごとく医学雑誌に論文として発表した。
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