脳血管障害やパーキンソン病などの大脳基底疾患では嚥下障害など咽喉頭筋の運動障害を伴うことが多い。咽喉頭筋や顎顔面筋の運動は大脳基底核から脚橋被蓋核への投射により制御される可能性が指摘されている。平成11年度は大脳基底核-脚橋被蓋核投射系の機能的接続様式を検討した。(1)大脳基底核出力部である黒質網状部から脚橋被蓋核のコリン細胞および非コリン細胞への投射の有無を検討し、(2)その際動く神経伝達物質の同定を試みた。実験にはラット(50-120g)の黒質網状部および脚橋被蓋核を含むin vitroスライス標本を用いた。黒質網状部を電気刺激し、脚橋被蓋核での細胞活動をパッチクランプ法を用いてホールセル記録した。記録した細胞がコリン作動性であるか否かの判定には、膜の電気生理学的特性ならびに免疫組織化学染色を用いた。その結果、(1)黒質網状部から脚橋被蓋核のコリン細胞および非コリン細胞の両者に対し抑制性投射があること、(2)この抑制系はGABA作動性であること、の2点を明らかにした。この結果は、大脳基底核から脚橋被蓋核のコリン細胞および非コリン細胞へのGABA作動性投射が脚橋被蓋核の出力レベルを調整することを示唆する。次年度は大脳基底核-脚橋被蓋核系が嚥下運動の発現にどのように関与するのかを検討する。
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