クリック音刺激によりヒトの頚筋に誘発される電位は前庭性頚筋電位あるいは前庭性系筋反射とよばれ、新しい前庭機能検査としての臨床応用が期待されているが、正常な起源についてはまだ議論の余地がある。本研究では前庭性頚筋電位の動物モデルを作成することを第一の目標とし、モルモットを用いてクリニック音刺激により誘発される電位を頚部にて記録して検討を加えた。対象は体重320〜580gのモルモットで、電極には銀ボール電極を用い、胸鎖乳突筋中央のレベルで椎前筋直上に関電極を、胸骨上端に不関電極をおいて測定を行った。音刺激には0.1msクリック音を用い、ABR域値上80〜105dBを同側より与え、刺激頻度5Hz、解析時間30ms、加算回数200回、帯域フィルター20〜1000Hzとした。結果として潜時4〜6msから立ち上がり6〜9msにピークをもつ再現性のある陰性波を認めた。域値はABR域値上80〜90dBで、ヒトの前庭性頚筋電位と共通の特徴が認められた。モルモットでは、クリック音感受性をもつ前庭神経一次ニューロンが存在することが報告されており、その起源は主に球形嚢斑と考えられている。本反応が前庭性頚筋電位の動物モデルになりうるかどうかの確認のため、今後は選択的前庭神経切断術後、あるいは薬物による蝸牛破壊後の本反応の変化について検討していく予定である。
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