ヒトにおける前庭性頚筋電位(Vestibular Evoked Myogenic Potential:VEMP)の測定法につき、通常の音刺激以外の刺激による実験を行った。まずタッピングによる測定では音刺激に近い反応が得られるが、刺激の定量化が困難という問題が生じた。電気刺激でも同様の結果が得られ、こちらは内耳疾患では反応が認められるものが存在する一方、後迷路性疾患では反応が消失していた。音刺激と異なり、電気刺激がより広範な部位を刺激している可能性があり、病巣部位の鑑別に有用である可能性が示唆された。これらの反応の経路は中枢では同一であると考えられるが、その検索にはヒトを用いた実験では限界があるため、動物実験としてモルモットを使用することにした。モルモットは前庭神経が音刺激に反応することが報告されており、ヒトのVEMPと同様の反応が得られれば同一の経路を介するものである可能性が高い。ただし実験は全身麻酔下に行われるため、VEMPのように頚筋を緊張させて測定をすることができない。そこでモルモットの筋原性電位を測定するのは諦め、音刺激への反応として頚髄を下降する電位を測定することとした。椎前筋上に電極をおいた結果ではクリック音刺激に対し、再現性のある陰性波NPを得ることができた。NPの由来を調べるため、蝸牛を薬理学的に破壊したモデルも作製、この場合も同様にNPが得られ、NPが前庭由来であることが示唆された。以上の結果を学術誌に投稿するためデータの集計を現在行っている状況である。
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