研究概要 |
1)前庭刺激および前庭空間認知異常時での心血管系反応を検討した。Suplne(条件1)および側臥位(条件2)でそれぞれ前屈位をとらせて、0.25Hzの強制呼吸ペース下、1分ごとの血圧、RR間隔、末梢血流量を測定した。RR間隔については周波数解析も行った。条件1においては血圧の有意な低下が見られ、条件2では変化はなかった。心拍数および末梢血流量の各評価項目において有意な変化はみられなかった。このことは、耳石器系および重力受容体系入力は血圧を低下させるように働き、血管運動系への作用が強く、心臓への直接的経路への影響は少ない可能性を示唆するものと思われた。2)視運動性刺激を与え、ベクション誘発時に頚部捻転させることで前庭空間認知異常が生じる。この際(条件1)の心血管系反応を、水平性視運動刺激のみによる水平性自己回転感覚時(条件2)および頚部捻転のみの場合(条件3)で比較した。ベクション誘発時にはともにevent responseとしての血圧上昇、脈拍数増加などが見られるが、条件2および3では脈拍数の変化は認めず、条件1においてはベクション誘発時持続性の血圧上昇を認めた。これは中枢交感神経系からの出力ではないかと予想される、なぜなら、心拍数の増加は見られておらず、刺激終了後急激に血圧低下作用に働いたことから推測した。3)めまい症例に対して、起立負荷に伴う心拍変動周波数解析および血圧変動を検討した。心拍数増加のみでめまい発症が誘発される可能性を示唆できた症例を呈示し、起立負荷にともなう心拍変動のパワースペクトラムを分析した。LF,HF、LH/HFの各成文を比較検討し、起立時の交感神経成分の過大反応が見られ、それを抑制する目的でβブロッカーを投与したところ、めまいは完全に消失した。また、安静時のLF/HFの値とめまいの予後の相関を検討した。LF/HF>1.1の症例においては<1.1の症例に比べて有意に予後が不良であった。
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