SHFMに先天性高度難聴を合併した症例に対してfine-deletion mappingを行い、本症例での染色体欠損領域を同定することを目標とした研究を行った。 1.症例:今回検討の対象としたのは症例は、出生直後から手足の指の部分欠損および筋緊張の低下、ほ乳困難などを指摘されていた。さらに小顎症などの多発奇形を認め、染色体検査が施行し7番染色体部分欠損症del(7)(q11.2q22)を指摘された。聴力検査ではABRで、cliok刺激にて右80dBnHL、左90dBnHLまでV波を認め、また高分解能CTでは両耳ともツチ骨、キヌタ骨の癒合などの中耳奇形が認められた。内耳には内耳道の狭窄と蝸牛の低形成を認め、前庭は膨大部の嚢胞状拡大を認めた。 2. fine deletion mapping:この患児の末梢血を採取し、フェノールクロロフォルム法にて、DNAを抽出した。抽出したDNAは、既報に従ってPCR反応を行った。PCR反応に使用したprimerの染色体上での位置は、GDB(genome database http://gdbwww.gdb.org/)に報告されているものを用いた。PCR反応の後、6%polyacrylamide gelにて電気泳動し、バンドの検出には銀染色を用いた。コントロールには3人の健康成人のDNAを用い、single alleleによるバンドパターンを確認した。このときのプライマーには、セントロメア側から順番に、D7S1830、D7S1831、D7S494、D7S669、D7S644 D7S646、D7S651、D7S518、D7S796、D7S525、D7S1817、D7S486、D7S480を用いた。 3. 研究結果:D7S644、D7S646、D7S651、D7S518の四つのマーカーは単一アレル由来のバンドのみが検出された。一方でこの領域に隣接するD7S669およびD7S796のマーカーでは、ヘテロ接合性が確認できたため、少なくともD7S644からD7S518までの最短4.58cM、最長で16.48cMの領域が欠損していることが示された。この領域はすでに報告のあるSHFM遺伝子座を含み、そのテロメアに広い領域を含んでいた。この遺伝子領域の中にはPDSは含まれなかったが、未だ同定されていないDFNB14の領域とoverlapしていた。
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