研究概要 |
従来のめまい診療は眼振を中心とした誘発検査が主流であり,めまい患者のめまい感を定量的に評価する検査方法はあまりなかった。そこで,外界空間に関する認知(視覚入力)と身体位置に関する認知(前庭入力・深部知覚入力)のズレ,即ち空間識の異常を定量的に調べる空間識検査法を考案し,臨床応用するために本研究を行った。 検査装置は.ヘッドマウントディスプレイ,角度センサー,ノートパソコンで構成され,被験者コンピュータグラフィックスの映像空間に合わせた頭部運動を指示し,この時の頭部傾斜角度を計測した。 今年度は、以下の点について研究を行った。 1.正常値についての検討 本検査装置を用いて,健康成人30名(男性18名,女性12名,平均年令29.8歳)について調べた結果,頭部傾斜角度の平均は18.0±2.0度,左右差の平均は1.5±1.2度であった。この結果から正常値(平均値±2SD)について,頭部傾斜角度の範囲は14.0〜22.0度,左右差は3.9度以内とした。 2.臨床奨励における検討 上記の正常値を元に,当科めまい外来を受診しためまい患者25例について本検査を施行した結果,25例中17例(68%)に異常値を認めた。 本研究から,空間識検査法を用いて空間識の異常を調べることで,めまい患者のめまい感を定量的に評価することが可能であると考えられた。
|