研究概要 |
平成11年度はSMI社製ビデオ式眼振計測装置・2DVOGを購入し,眼球運動をデータレコーダ,ポリグラム,コンピュータに取り込むシステムを構築した.眼球運動誘発用視覚刺激装置(第一医科製)を刺激波形作成用および出力用コンピュータにより駆動するが,前者で種々の振幅と周波数の正弦波をつくった.また,0.1,0.2,0.4,0.8Hzの最大角速度が一定である正弦波を位相がランダムになるように組み合わせ,Pseudorandom波も試作し,これらの波形が実際に正確に出力,駆動されることを確認した.2DVOGは,瞳孔中心の位置の軌跡で水平,垂直2方向の眼球運動を表しており,通常の電気眼振図より計測が簡便で,侵襲が少なく,S/N比が大きいという利点がある.一方,瞳孔中心を認識する必要があるため,瞼裂の狭い被験者や瞬目が多い患者などでは眼球運動の精度に多少問題があることがわかったが,これらの点は電気眼振計での記録でも同様であり,また瞳孔中心を認識する閾値を調節することで改善されることがわかった.従来の電気眼振系ではS/N比が悪いため,小さな眼球運動とノイズと区別することが困難であり,視覚刺激として振幅の小さな正弦波やこれを含むPseudorandom波は制限されていたが,2DVOGにおいてこれらの刺激を用いても良好に眼球運動を記録することができ,眼球運動障害の分類を更に細分化することができると期待している.現時点では,正常被験者のデータを主に集積しており,これと並行して末梢性めまいの代表的疾患である,メニエール病の患者も徐々に対象として検査を行っている.向後中枢系めまい平衡障害患者に対象を広げ,追跡眼球運動の予測制御系に関した障害の有無あるいは,滑動性追従眼球運動系そのものの障害か衝動性眼球運動の障害かを明らかにする,すなわち病巣局在の鑑別の細分化が可能となることが期待される.
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