IGF-I遺伝子ベクターの注入頻度と治療効果との関係 1回投与群、3回投与群、対照群をにおいて、初回注入から4週間後に喉頭を摘出し、凍結後、連続組織切片を作製した。凍結切片をactomyosinATPase染色し、筋線維径を測定して筋萎縮の防止の程度を評価し、さらに、acethylcholinesterase-silver染色を行い、末梢運動神経と神経終板の連続性が保たれている程度、および神経終板染色域の長径を計測し評価した。この結果、1回投与群では対照群に比べ、有意に筋萎縮所見や上述の末梢運動神経と神経終板の組織学的所見が改善した。3回投与群でも対照群に比べ有意に筋萎縮所見や上述の末梢運動神経と神経終板の組織学的所見が改善された。しかしながら、今回試みた1回投与群と3回投与群間の比較では、効果の差は認められず、複数回投与の効果は認められなかった。 IGF-I遺伝子治療の筋機能に対する効果の評価 上記研究を推進する上で重要なモデルラットの確立を今年度では行った。Sprague-Dawleyラットを用い、左反回神経を止血用鉗子で圧迫し、あるいは、左反回神経を切断後の縫合修復し、神経坐滅モデル、神経縫合再生モデルを作製した。また、一側の輪状披裂を破壊した関節固着モデルも作製した。術後7、14、30、90、180日後に、筋収縮速度を規定するmyosin heavy chain(MyHC)タンパクを抽出し、SDS-PAGEでMyHCタンパク組成解析を行った。その結果、神経坐滅モデルで声帯運動が回復したものは、MyHCの発現型が正常化し、神経縫合再生モデルでは声帯運動が回復せず、MyHCの発現型が脱神経性の変化を示した。関節固着モデルではMyHCの発現型は正常であった。したがって、MyHCの発現型は脱神経後、神経再生しても、神経過誤支配があると正常化しないことが示された。
|