NMDAレセプターのε1サブユニットとε4サブユニットのジーンを欠失させたノックアウトマウスとワイルドマウスより蝸牛螺旋神経節細胞を単離し、組織培養を行った。すでに報告した方法により、光学計測を実際に行うチャンバー内に蝸牛螺旋神経節細胞が十分量、底面に固定された状態で実験可能となるよう準備を行った。 以前に報告したように、チャンバー内の細胞外液を高カリウムの液に置換することにより、神経節細胞を脱分極させ、この時の膜電位変化の計測を、膜電位感受性色素を用いた光学的計測により行った。 しかしながら、高カリウム溶液の置換による方法では単離細胞からの光学的変化は非常に微細で、光学的に膜電位変化を捉えることが可能であることは確認できたが、それ以上の検討が困難であることも解った。 以上の経過より今後NMDAレセプターのε1サブユニットとε4サブユニットのジーンを欠失させたノックアウトマウスとワイルドマウスの蝸牛螺旋神経節細胞を比較検討するために、新たに有毛細胞から蝸牛螺旋神経節細胞を含む蝸牛コルチ器を取り出し、器官培養を行い実験材料とすることとした。 有毛細胞を電気刺激し光学的シグナルを加算平均することと、同時に多数個の蝸牛螺旋神経節細胞からデータを取得することができることにより、光学的シグナルの信号雑音比が上昇し、今後薬理学的検討等が可能となることを確認した。来年度はこの材料を用いて検討を続けていく予定である。
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