研究概要 |
加齢黄斑変性は近年ますます増加している、高度の視力障害をきたす疾患である。その背景には環境的な危険因子とともに遺伝的な要素も関係していると考えられる。最近加齢黄斑変性において、Starg ardt病の原因遺伝子であるABCR(Retina-specific ATP binding cassette trans porter)に13の遺伝子異常があることが報告された。ABCR mRNAは網膜に特異的に発現している。今回、日本人の萎縮型加齢黄斑変性とABCR遺伝子の異常に関連性があるか検討した。東北大学眼科外来で、萎縮型加齢黄斑変性と診断された25例の患者からinformed consentに基づいて末梢血を採取し、加齢黄斑変性を認めない40例の患者を対照群とした。genomeDNAを抽出し、目的の26個のexonをPCR法で増幅した。得られたPCR産物をすべてdirect sequence法にて塩基配列を決定し解決した。 ABCR遺伝子のexon23に全例でP1116S,H1125L,Q1126Lの塩基置換が存在したが、これは対照群においても全例に存在した。exon29に報告された変異と同じT1428Mのアミノ酸変異が1例認められた(1/25;4%)が、この変異は対照群にも認められた(2/40;5%)。Starg ardt病における既知のポリモルフィズムと同じI2083Iが2例認められた。intron33にヘテロの塩基置換が4例、ホモの塩基置換が2例認められた。Allikmetsらは加齢黄斑変性の16%にABCR遺伝子の異常があると報告したが、今回の検討ではこれを支持する結果は得られなかった。ABCRが網膜疾患にどう関わっているか明らかにするためには、ABCRの機能及び遺伝子の発現調節機構の解明も必要であると思われ、今後の課題と考えられる。
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