Wistar ratの視神経を切断し、3日後に網膜を取り出しmRNAを抽出した。mock operationを行った眼球からの網膜をコントロールとした。subtraction libraryを作成し、視神経切断後に発現が上昇する分子の単離した。現在、視神経切断後に発現が上昇する遺伝子の単離は進行中であるが、すでにいくつかの興味深い遺伝子が単離されている。既知の遺伝子ではHrkが視神経切断後12時間後から7日後まで発現が認められることがわかった(学会報告済み)。この分子はBH3 domain only proteinの一種でnerve growth factor除去後の神経細胞死に関与していることが示唆されている分子である。網膜においても視神経切断後に発現が上昇することは本実験で初めて明らかになった知見であり、軸索切断後の網膜神経節細胞のアポトーシスの決定において重要な機能を有すると考えられる。また、視神経切断ラットに種々の薬物を投与し、Hrkの発現を検討したところ、その発現を抑制できる薬物が発見された。現在この薬物が網膜神経節細胞のアポトーシスを阻止する働きがあるかについて検討中である。未知の分子では、ヒトJIKにホモロジーのある分子が単離された。JIKはSTE20 kinase familyの一種で、JNKの活性を阻害する。JIKはEGFによりnegativeなregulationを受けていると報告されており、EGF除去によるアポトーシスの誘導に関わっていることが推測されている。今回私がcloningした分子についても実際どのような機能を持ち、いかなるメカニズムでその発現がコントロールされるのかについて解析を進めている。そのほかの分子についても同様に解析中である。
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