【目的】Alzheimer病患者の疑似ランダム光刺激視覚誘発電位を測定しその特徴を検討する。 【対象、方法】Alzheimer病患者18名36眼と正常者13名13眼を対象とした。まずAlzheimer病患者を(1)痴呆進行度、(2)視覚失認の有無の2つの観点から分類した。(1)痴呆進行度についてはMini mental State Exam ination(MMSE)の点数に基き軽症(20〜29)、中等度(10〜19)、重症(0〜9)の3群に分けた。(2)視覚失認の有無については色覚、立体視、二重五角形転写テストを行い、検査結果が良好な者を視覚失認陰性群、不良な者を視覚失認陽性群に分類した。対象患者の内訳は痴呆軽症群はすべて視覚失認陰性群、痴呆重症群はすべて視覚失認陽性群、痴呆中等度群は12名が視覚失認陰性群、6名が視覚失認陽性群であった。すべての被験者に疑似ランダム光刺激視覚誘発電位(PRBS-VEP)を施行し、1)潜時、振幅と2)2-30Hzの範囲で2Hz毎の時間周波数特性(TFC)を求めた。(1)痴呆進行度分類の各群と正常対照群間、(2)視覚失認陽性群、陰性群と正常対照群間の差異を各々検定(ANOVA、多重比較)した。 【結果】1)振幅は痴呆重症群および視覚失認陽性群で有意に減少した(t検定、p<0.05)が潜時はすべての群間で有意差は無かった。2)時間周波数特性では、痴呆進行度分類では重症群の18Hz-24Hzに有意な減弱があった(p<0.01)。視覚症状別分類でも視覚失認陽性群の18-22Hzに有意な減弱があった(p<0.05)。 【まとめ】Alzheimer病の視覚失認を示すサブグループでは直径の大きな視神経線維の脱落やVEP潜時延長など視神経変化の報告がある。今回の調査では、痴呆の進行ないし視覚失認の進行に伴い高周波数帯域の利得低下が測定され疑似ランダム刺激視覚誘発電位で検出可能であった。
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