まず新潟大学眼科における網膜電図(以下ERG)測定装置の検証(刺激輝度の精密な測光、測定機器の精度を上げる努力など)を行い、あたらしいERGa波の解析を行うのに充分な測定環境を整えた。次に正常被験者30人のERG測定を行い、その波形をHoodとBirch(1994)により考案された指数関数モデルにフィットさせ、3つのパラメーター(S、td、Rmp3)の平均値と標準偏差を計算し、当科における正常値を決定した。綱膜色素変性症、網膜中心静脈閉塞症、先天網膜分離症、Occult Macular Dystrophy(OMD)、錐体ジストロフィー、小口病などの患者眼ERGを測定し、患者眼におけるパラメーターを計算し、眼底所見、視野、他の刺激によるERGの結果も合わせて、網膜機能の評価を現在検討中である。同意の得られた患者からは血液サンプルを採取し、弘前大学眼科中沢満教授のもとへ送り、疾患の原因遺伝子の解析も試みてもらっている。当科の先天性網膜分離症家系の遺伝子解析結果はERG所見と合わせ、中沢教授により、厚生省特定疾患、網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班、1999年度班会議(第2回)(平成12年2月、仙台)で発表された(演題名:先天網膜分離症2家系4症例の遺伝子異常(P192T、R209C)と臨床像の解析)。先天性網膜分離症、OMD患者データの一部を第104回日本眼科学会総会(平成12年4月、京都)およびARVO Annual Meeting(平成12年5月、米国)に発表予定である。また、平成11年11月27日より12月4日まで、私は米国コロンビア大学を訪問し、Hood教授と当科のERGデータについて討論してきた。
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