研究概要 |
我々はこれまでに、リポポリサッカライド(LPS)を家兔耳静脈より投与して惹起した前房内フレア値の上昇を柴苓湯・黄連解毒湯・洗肝明目湯が抑制することを明らかとした。 平成11年度は、より強い眼内炎症抑制物質の探求のため、この3種類の漢方薬の唯一の共通生薬である黄岑の実験的前房内フレア値の上昇の抑制効果を調べた。 方法:実験動物には、体重2.5-3.5kgの日本有色家兔を用いた。黄岑含有食餌(2%,0.07%)を作成し、この漢方薬配合飼料で5日間飼育した後に、LPS0.5μg/kgを家兔耳静脈より投与し眼内炎症を惹起した。コントロール群は漢方薬非含有食餌で飼育し、同様の方法で眼内炎症を惹起した。黄岑の前房内フレア値の上昇抑制効果を調べるため、一定時間毎の前房内フレア値を経時的に測定して得られた反応時間曲線下面積(AUC)をコントロール群と比較した。また、この眼内炎症抑制のメカニズムの解明のため、前房水中のインターロイキン6の測定を行った。 結果:コントロール群のAUCは5,066arbitrary unitであった。2%黄岑含有食餌群のAUCは2,000arbitrary unit、0.07%黄岑含有食餌群のAUCは2,250arbitrary unitで、コントロール群と比較し有意に前房内フレア値の上昇を抑制した。前房水中のインターロイキン6は両群とも検出不能であった。 結論:柴苓湯・黄連解毒湯・洗肝明目湯の共通生薬である黄岑を用い、LPSで惹起した前房内フレア値上昇の抑制効果を調べた。黄岑投与群はこの前房内フレア値の上昇をコントロール群と比較し有意に抑制した。黄岑の臨床応用の可能性が示唆された。
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