本年は、増殖性硝子体網膜症における眼内薬物除放システムの開発のために実験的増殖性硝子体網膜症モデルを使用し、薬剤含有高分子強膜プラグの増殖性硝子体網膜症発生予防効果を評価するとともに、治療群の眼球を摘出し網膜その他の組織への毒性の有無を検討した。昨年度に引き続き、PLGAを基剤とする生体分解性高分子からなる強膜プラグを使用した。まず、5-フルオロウラシル、トラニラスト、シスヒドロキシプロリン、ステロイドそれぞれを含有する強膜プラグを作成し、最適な薬剤の徐放パターンとなるようにPLGA、乳酸、グリコール酸の共重合比を設定した。次にSF6ガス注入と培養線維芽細胞の硝子体注入により実験的に増殖性硝子体網膜症を誘導した家兎眼の毛様体扁平部の強膜に5-フルオロウラシル含有強膜プラグ、ステロイド含有強膜プラグを移植した。移植3ヶ月後に強膜プラグ移植眼を眼球摘出のうえ標本固定し、病理組織学的な網膜、網膜色素上皮への傷害を観察し、硝子体内に薬物を注入する群、全身的に薬物を投与する群と比較検討した。その結果、単独移植群の中では5-フルオロウラシル含有プラグ群に最も強力な網膜剥離発生頻度の抑制が認められたが、組織学的に網膜に軽度の傷害も認められ、網膜毒性の存在が示唆された。5-フルオロウラシル含有プラグ・ステロイド含有プラグ併用群はさらに優れた網膜剥離予防効果を示したが、網膜への毒性は5-フルオロウラシル単独移植群と差を認めなかった。網膜毒性について今後は網膜電位などを用いた網膜機能の評価を進めていく予定である。
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