1)電気生理学的検討 前年度の研究によりラット網膜色素上皮細胞にはKir4.1に似た性質を持つK^+チャネルが存在することが明らかとなった。平成12年度ではラット網膜色素上皮細胞に対する全細胞電流を記録したが、この全細胞電流記録はそのコンダクタンスが細胞外液のK^+濃度に依存しないという性質を有しており、Kir4.1とは性質の異なるものであった。 2)分子生物学的検討 ラット網膜切片に対してin situ hybridization法を用いて検討したが、その結果Kir4.1のmRNAの発現が網膜色素上皮細胞および網膜グリア細胞に一致して観察された。 3)免疫組織学的検討 ラット網膜切片において光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて免疫組織学的検討を行った。光学顕微鏡を用いての観察では網膜色素上皮のapical側に抗ラットKir4.1抗体による染色像が確認された。なお、この染色像は上皮細胞のマーカーである抗サイトケラチン抗体による染色像と一致していた。電子顕微鏡を用いた観察ではKir4.1の染色像は網膜色素上皮のapical microvilliの先端から中間部にかけて存在しており、microvilliの根元あるいはbasolateral側には存在しなかった。 これらのことから網膜色素上皮細胞には内向き整流カリウムチャネルの一種であるKir4.1がapical膜、とりわけmicrovilliの先端から中間部にかけて機能的に発現していることが強く示唆された。これまでの電気生理学的検討により網膜色素上皮細胞にはKirが存在することが示唆されていたが、今回の研究により、その存在および分子生物学的性質が初めて確認された。また、その細胞内局在に関しても興味深い知見が得られた。今回の電気生理学的検討からはKir4.1以外のチャネルが存在する可能性が示唆されており、今後はこのチャネルの解明および機能分担について検討を進める予定である。
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