目的:全身投与された薬剤の眼内移行は血液-眼関門により制限される。そのため薬剤の硝子体内直接投与などが行われているが、硝子体内半減期が短いため、頻回投与が必要となり、感染・出血および網膜剥離などの合併症や患者の苦痛も多くなる。そこで、1回の硝子体内投与で網膜硝子体へ長期間薬剤を持続的に放出できる眼内での薬剤放出制御システムを確立することを目的として検討を進めている。今回、硝子体内に投与されたナノスフェアー(NS)の眼内での動態を生体眼で評価した。対照と方法:有色家兎眼に、粒子径それぞれ2×10^3、200および50nmであるpolystyreneの蛍光色素含有NSを硝子体内に各群5眼づつ直接注入した。対照としてフルオレセインナトリウム水溶液(FN)を注入した。蛍光濃度が10μg/mlとなるよう投与した。NSの眼部各組織への移行をフルオロフォトメトリーにより経時的に測定した。また投与1か月に蛍光顕微鏡によりNSの標的組織と排出路を組織学的に検索した。結果:FNは3日以内に眼内より消失したが(T_<1/2>=7.8±0.7時間)、NSは1か月以上にわたり眼内に存在した(2×10^3nm;T_<1/2>=5.4±0.8日、200nm;T_<1/2>=8.6±0.7日、50nm;T_<1/2>=10.1±1.8日)。また、粒子径が小さいNSほど長期間眼内に残存する傾向が認められた(r=-0.88)。投与1か月にNSは組織学的に網膜内と隅角に認められた。結論:NSを担体とした薬剤の硝子体内投与は、長期間にわたる網膜硝子体への放出制御システムとして有用である可能性が示唆された。
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