角膜上皮創傷治癒におけるEGF受容体の役割を明らかにするために、角膜上皮欠損治癒過程においてEGF受容体阻害剤の経口投与による角膜上皮のS期細胞の数と角膜上皮の厚みの変化について検討した。 方法は約200gのWistar系ラット30匹を3群に分け、1群には40mg/kgのEGF受容体阻害剤を、1群には80mg/kgの阻害剤を、残りのコントロール群には溶媒のみを1日1回、角膜上皮欠損作成の3日前から上皮欠損が修復するまでのあいだ経口投与した。n-ヘプタノールを用いてラットの角膜中央に直径5.5mmの上皮欠損を作成し、12時間ごとに写真を撮影してコンピューター解析により欠損面積を算出した。12、24、48時間目においては摘出眼球を強角膜片にしたのち組織培養を行い、S期における細胞の取込みを計測し、さらに組織切片で修復上皮の厚みを計測した。その結果、EGF受容体阻害剤の投与により上皮の修復は明らかに遅延し、その遅延は薬剤濃度に依存していた。24時間目において、投与群では明らかにコントロール群に比べてS期の取込み細胞が減少していた(p<0.05)。また、上皮の厚みは投与群でコントロール群に比べて薄くなっていることが観察された(p<0.05)。これらの結果より、角膜創傷治癒過程においてEGF受容体は、角膜上皮の細胞増殖と重層化に関与することが示唆された。
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