研究概要 |
視神経乳頭を養う後毛様動脈の血管トーヌスを測定するため摘出白色家兎後毛様動脈を用い薬理学的に当尺性収縮を記録した。今回、血管周囲に白金板を設置しフィールド刺激(50Hz,0.8msec in duration,50 V in strength)を加え同血管の神経支配、さらにムスカリン受容体作用薬であり古典的緑内障治療薬であるピロカルピンを作用させ同血管に及ぼす影響を検討した。 摘出動脈はα-交感神経作用薬(フェニレフリン)により濃度依存的に、さらにフィールド刺激により収縮を示し、両反応ともα-受容体拮抗薬(ブナゾシン)にて抑制された。しかしβ-交感神経作用薬は全く効果を示さなかった。ゆえに同血管にはα-受容体は存在するものの、β-受容体はほとんど存在しないと考えられた。 高濃度ヒスタミンにて前収縮させピロカルピンを投与すると濃度依存的に弛緩を示した。この反応は内皮の機械的除去、アトロピン前投与にて抑制されたため内皮依存性のNO(一酸化窒素)の放出が考えられた。さらに前収縮状態でフィールド刺激を加えると一過性の弛緩を示した。この弛緩はNO合成阻害剤であるN-ニトロ-L-アルギニンメチルエステルで抑制され、L-アルギニンの投与により再増加したが、一方、内皮除去にて変化を認めなかったため一酸化窒素(NO)合成酵素を含む神経線維の存在が示された。 以上の結果よりウサギ後毛様動脈には収縮に関与する交感神経、弛緩に関与するNOを神経伝達物質とする2つの神経に支配されていることが判明した。また古典的緑内障治療薬であるピロカルピンは血流改善作用を持つことが考えられた。臨床的に緑内障、虚血性視神経症の治療に今後応用が期待され更に詳しい実験を推進して行く予定である。
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