家兎の角膜内皮より作成されたcDNAライブラリーから1000個のクローンをランダムに抽出し、そのインサート部をPCRで増殖、精製した後、dye terminator法によりオートシークエンサーにて塩基配列を決定した。その結果はインターネットを通じ、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)にあるデータベースにおいて塩基配列検索ソフトFASTA、BLASTN、TBLASTX、BLASTX による既知配列とホモロジー検索を行った。1000個中、618個のクローンが既知の遺伝子と相同性を示した。192個のクローンは既に既知のESTs(expression sequence tags)と一致した。残りの174個は何の相同性もデータベース上認めない未知の遺伝子であった。既知遺伝子と相同性を認めた618クローンの内、上位に認めたものはコラーゲンの typeVIII、SPARC(secreted protein acidic and rich in cysteine)、lysyloxidase、phosphatidylcholine-2-acylhydrolase、トロンボスポンジンなどであった。ESTと一致したクローン群や未知のクローン群のなかには高い頻度で認められたいくつかのクローンが存在し、角膜内皮において何らかの重要な働きをもつものかもしれない。 現在、得られたデータ内で細胞増殖などに関与する遺伝子などについては、RT-PCR法を用いた実際の角膜内皮における発現に関する実験を検討している。同じ角膜内皮細胞でも増殖能をもつ家兎の細胞と増殖能を持たないヒトの細胞では発現に違いが出るかもしれず、角膜内皮細胞の増殖に関する新たな知見が得られるかもしれない。
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