本研究は水晶体前面での紫外線被曝の状況を紫外線センサー機能をもつ試作眼内レンズ(Polysulphone)の挿入をもって生体レベルで検出し、この結果を基にこれまで検討のなかった狭波長幅(7〜10nm単位)での照射によるヒト水晶体上皮細胞(樹立細胞)の損傷、修復状況を見ようとするものである。 平成11年度は、挟波長紫外線で、不死化ヒト水晶体上皮細胞(SRA01/04)を照射し、その生存率をみることにより、各波長による細胞毒性を検討した。今回検討したのは、256、262、271、280、290、298、313、336nmの8波長で、紫外線の半値幅は10nmである。 波長別の細胞生存率は紫外線照射量に依存して低下した。各波長のIC50値は短波長側ほど小さく、その細胞毒性が強かった。256nmと比較した場合、IC50値は290nmで1.8倍、298nmで10・5倍、313nmで102倍、336nmで1539倍であった。今回の結果と筑波市での紫外線強度およびSlineyらにより報告されている各波長の眼内への透過率から、313nmおよび336nmでの水晶体上皮細胞障害を推測した。ヒト水晶体上皮細胞で10%の細胞死を誘発するのに必要な眼表面での紫外線量(被爆時間)は、313nmでは50mJ/cm^2(20分)および336nmでは900mJ/cm^2(3.5時間)となり、水晶体前面で被曝し得る照射量でも、培養上皮細胞障害が起こることが明らかになった。 PolySulphone眼内レンズを用いた実験は現在進行中である。
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