生後0、3日マウスにN-methyl-N-nitrosourea(MNU)を投与すると、特に投与3日目に視細胞アポトーシスと視細胞の増殖が見られ、投与1〜3週にロゼット形成を特徴とする網膜異形成が見られた。以後、網膜には変化が見られず、元の形態に復した。生後5、8日投与では、経過観察期間中網膜に変化は見られなかった。生後11日投与では、成熟マウスと同様に、投与3日目に視細胞アポトーシスが生じ、投与1週で視細胞層はほぼ消失した。視細胞アポトーシスは、網膜変性群では、形態学的に核濃縮が見られるだけであるが、網膜異形成群では、核濃縮の他に他臓器のアポトーシスでみられる、アポトーシス小体が電顕で確認され、形態学的に違いが見られた。 ホルマリン、メタカルン固定後パラフィン切片を作製し、免疫組織学的検討を行ったが、basic FGF(fibroblastic growth factor)については、microwave抗原賦活法により神経節細胞層に陽性核が見られたが、投与群、非投与群あるいは網膜異形成群、網膜変性群で差は見られなかった。その他(Bc1-2、c-fos、TGF(transforming growth factor)-β1)については、各種抗原賦活法を用いても染色は見られなかった。現在は凍結切片を用いて検討中である。なお、c-fosについては、凍結切片で検討したが、MNUの投与、非投与にかかわらず、わずかに外顆粒層に陽性核が見られた。これは過去の報告通り光障害によるもので、MNUによる網膜の変化とは無関係であると思われる。 なお、我々のラットMNU網膜変性の実験で、視細胞アポトーシスには、Baxのup-regulationとBc1-2のdown-regulationが関与していることが確認できた。これについても今後検討予定である。
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