組織工学(Tissue engineering)的手法を用いて、人工臓器を作る研究がさかんにおこなわれているが、生体内で細胞や組織の機能を長期間、維持する為の栄養血管についての配慮が欠けていることが多い。本研究では培養細胞を用いて栄養血管柄付きの生体内代用臓器の開発を目標とした。内皮細胞に負荷される力学的応力とくにshear stressが血管新生のメカニズムに深く関与し、その増加が血管新生を亢進することが報告されている。研究者のグループは、ラットの大腿動静脈にシャント手術を施して、その血管を人工真皮で被覆することによって血管新生を惹起するモデルを開発した。本研究ではこのモデルを用い、人工真皮内に肝細胞を播種して新生される毛細血管周辺に細胞を生着させ、血管柄付きの人工肝臓の開発を目的とした。 平成11年度後期には、動静脈吻合の手技が洗練し、血管の開存率が高くなった。肝細胞の採取に関しては、肝臓を部分的に摘出後、顕微鏡下コラゲナーゼ潅流法を開発し、従来の振とう法を組み合わせることで、単離の高効率化が可能となった。 平成12年度には、培養肝細胞を播種したシャント周囲の肉芽組織の組織学的観察において、肝細胞様の集族形態を認める細胞を認めた。しかし、アルブミン染色で陽性反応は得られていない。今後、他の免疫組織染色を用いて肝細胞の同定を行なうとともに、肉芽組織内に肝細胞以外の細胞でも生着するかどうか確認していく予定である。
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