蛋白分解酵素阻害剤(ウリナスタチン)の熱傷初期輸液におよぼす影響について検討した。平均熱傷面積はII度30%とし、ウリナスタチン投与群(UST群n=6)、コントロール群(C群n=8)とし、UST群はウリナスタチン30万単位をone shotで静注した。尿量を1ml/kg/hに保つよう輸液量を適時増減し輸液量、循環動態、血液検査について各群の比較を行った。結果:UST群の輸液量は0〜8時間、8〜24時間の各測定期間でC群の約半分量で、統計学的に有意差を認めた。循環動態は収縮期血圧、脈拍数およびCVPは経過中有意な変化はなく、両群間にも差は認めなかった。血液検査所見では血中の蛋白質(TP)は両群とも経過中有意に低下したが、8時間後、受傷24時間後におけるTPはUST群がC群に対し有意に高値を示した。以上の結果より熱傷急性期にウリナスタチンの投与により尿量および循環動態を維持しつつ輸液量を減らすことができた。これは熱傷初期の大量輸液の原因である血管透過性亢進に対しウリナスタチンに抑制効果があると推測された。さらに重症の熱傷にはウリナスタチン30万単位の投与では不十分なことが予想され、今後50%以上のII度・III度熱傷に対し投与量、投与方法を検討したい。
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