イヌを用いた頭蓋学顔面骨領域における骨延長術の可能性を検索するため、実験モデルの作成を行った。まずケイセイ医科製の臨床用骨延長器による頭蓋骨の延長を試みた。イヌは全身麻酔下に前頭骨を一塊とした骨切術を施行し、骨延長器を装着し一日1mmの割合で延長を行った。しかしながら延長途中の段階において延長器の露出等の合併症を見たため、当初の予定である延長を行うことは困難であった。 そこで新規の延長器の作成に着手した。開発にあたり、現在の骨延長装置の欠点の一つである延長装具の抜去が必要であるという点を改善することを念頭に置いた。まず主たる材料をポリ乳酸とすることにより吸収性の延長器が作成できると考え試作に取り組んだ。延長器の主軸は従来のチタン性のものを流用した。作成した延長器の力学的強度等を確認する必要があるため、イヌの下顎骨延長モデルを作成し、吸収性骨延長器を埋入し延長を行うこととした。イヌを全身麻酔下において左下顎骨の皮質骨切開を加え骨髄の血行を保ちつつ骨折させた。骨折部にポリ乳酸製の骨延長器を装着した。1週間の待機期間後一日1mmの割合で延長を行った。現在までのところ5頭のイヌモデルを作成し実際に延長を行っているところである。また延長された下顎骨を経時的にX線にて撮影する必要があるため、イヌの頭蓋骨用のX線撮影用頭部固定装置を作成した。結果が得られるまでなお2〜3ヶ月を要する見込みである。
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