ミニブタにおける下咽頭・喉頭周囲の解剖および色素注入により、喉頭に流入し、手術顕微鏡下に微小血管吻合が可能で、かつ単独で喉頭移植を行なうに足る一組の動静脈は存在しなかった。従って、同所性自家移植においては喉頭は片側の大血管に広く付着させ、異所性自家移植および同種移植においては頚部の大血管を含めて喉頭を採取する必要があると考えられた。 また、気管切開を行なったうえで、頚部気管および咽頭を離断し、各々再度縫合する同所性自家喉頭移植においては、術後早期の気道確保に困難があり、ミニブタは周術期に死亡するため、呼吸、発声、嚥下などの喉頭機能の評価に行なうに値する長期生存例は現時点では得られていない。 粘膜、軟骨、筋肉などの組織学的な検討をについても同様に、現時点では評価は行ない得ていない。 これらの結果より、ミニブタにおける同所性自家喉頭移植については、当初計画した方法では術後の呼吸管理の問題から安定した成績を得ることが困難と考えられる。そのため、現在、以下の改良した術式を検討している。 すなわち、初回の自家喉頭移植手術では咽頭側の縫合のみにとどめて、気管側は盲端とし、一旦、永久気管孔を造設する。その後、咽頭側の創治癒が完了した時点で、2期的に気管側を吻合し、気管孔を閉鎖する。これにより、術後の呼吸管理が容易となるため、ミニブタの周術期の死亡率を低下させ、喉頭機能の評価および組織学的な検討が可能となると思われる。
|