【概要】本研究は導管障害を受けたラット顎下線の退行性変化を組織学的、免疫組織化学的、電顕的に観察し、その過程における細胞増殖と細胞死の意義について明らかにすることを目的としている。平成11年度では主として動物実験、組織学的検索、細胞増殖に関する免疫組織化学的検索、TUNEL法による細胞死の検索を行った。細胞増殖の同定には抗BrdUモノクローナル抗体を用いる予定であったが、予備実験の結果、別の細胞増殖マーカーである抗PCNA抗体を用いることとした。 【結果】ラット顎下線の導管結紮後、腺組織は萎縮し、経時的には腺房は減少傾向を示した。一方、多くの導管は残存し、その周囲には炎症性細胞浸潤を伴う結合組織の増生が認められた。腺房では初期においてTUNEL陽性細胞やアポトーシス小体が多く認められたが、PCNA陽性を示す細胞は実験期間を通してごく僅かであった。導管では初期において多くのPCNA陽性細胞や分裂像がみられるだけでなく、TUNEL陽性細胞も少なからず認められた。以上の結果より導管結紮顎下線では、腺房は細胞死により減少し、導管の残存は細胞増殖と細胞死の両方の要因により制御されていることが示唆された。 【展望】平成12年度では、抗PCNA抗体による細胞増殖の検索とTUNEL法による細胞死の検索を補充すると共に、さらに電顕的観察を行い、細胞死がアポートシスによるものかどうかを検索する予定である。
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