軟骨・骨におよぼすFGFとPTHrPの作用(遺伝子組み替えマウスを用いた解析)

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11771109
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 網塚 憲生 新潟大学, 歯学部, 助手 (30242431)
• キーワード: 副甲状腺ホルモン関連ペプチド / 線維芽細胞増殖因子レセプター3 / 軟骨 / PTH / PTHrPレセプター / 骨芽細胞 / 核小体移行 / alternative translation / 遺伝子欠損マウス

研究概要

申請者は、軟骨および骨芽細胞の分化増殖に重要な因子である線維芽細胞増殖因子レセプ夕ー3(FGFR3)と副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)の生物学的作用を解析することを目的に研究を進めてきた。平成11年度で計画した研究内容は、【研究計画1】PTHrPのalternative translationと核小体移行および細胞外分泌との関連、および、【研究計画2】FGFR3/PTHrP遺伝子欠損マウスにおける軟骨・骨の形成異常解析であり、本年度の日本骨代謝学会、解剖学会およびアメリカ骨代謝学会でその研究成果を発表している。また、【研究計画1】のPTHrPの核小体移行に関する論文は現在投稿中であり、【研究計画2】のFGFR3/PTHrP遺伝子欠損マウスの組織解析は、カナダMcGill大学、Washington大学との共同研究として現在、論文作成中である。以上から、研究内容は計画通り遂行されていると考えられる。本研究成果の内容としては、PTHrPはFGFと同様にalternative translationがおき、それは細胞により異なること、従ってPTH/PTHrPレセプターを介さない別の作用機構が存在する事が強く示唆された。一方、FGFR3/PTHrP遺伝子欠損マウスの解析結果では、軟骨の増殖に対しては、FGFR3よりもPTHrPが優位に作用する、すなわちPTHrPが軟骨の増殖に対して最終的なカスケードシグナルである可能性が示唆された。このことは、臨床的にFGFR3の点突然変異が生じた細胞においてPTHrPの発現が減少するという報告を支持する事となった。このようにPTHrPとFGFR3の作用の解明は、基礎医学的研究の進歩に貢献するばかりでなく、臨床的にも先天異常の解明にもつながると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Amizuka et al.: "Vitamin D3 differentially regulates parathyroid hormone/parathyroid hormone-related peptide receptor expression in bone and cartilage"Journal of Clinical Investigation. 103(3). 373-381 (1999)
• [文献書誌] Horiuchi K, Amizuka et al.: "Identification and characterization of a novel protein, periostin (OSF-2) with restricted expression to periosteum and periodantal ligament"Journal of Bone and Mineral Research. 14. 1239-1249 (1999)
• [文献書誌] Ito M, Amizuka N et al.: "Ultrastructural and cytochemical observation of apoptotic osteoclasts induced by bisphosphonate"Bone. 25. 447-452 (1999)
• [文献書誌] Wakita K, Amizuka N. et al.: "Maturation ameloblasts of the procine germ do not express amelogenin"Histochem Cell Biol. 111. 297-303 (1999)
• [文献書誌] Izumi N, Amizuka N. et al.: "Ultrastructural alteration of osteoclasts treated with brefeldin A and wortmanin"Acta. Histo. Cyto. 32(5). 393-405 (1999)
• [文献書誌] Karaplis et al.: "Blomstrand chondrodisplasia caused by a missence mutation in the human parathyroid hormone receptor-1"Endocrinology. 139(12). 5255-5258 (1999)