前年度は、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)のドメイン3を認識するDIG標識RNAプローブを作製し、in-situハイブリダイゼーション法により唾液腺腺様嚢胞癌由来培養細胞ACC3および腺様嚢胞癌組織におけるHSPGのmRNA発現パターンを検索した。 今年度は、HSPGのヘパラン硫酸鎖結合部位であるドメイン1の発現および機能を検索するため、RT-PCRによりドメイン1のcDNAを合成した。 1.ドメイン1の全長より10塩基対を両末端に多く含むプライマーを設計し、正常唾液腺cDNAおよびACC3細胞cDNAをもちいてPCRをおこなった。 2.PCRの結果、正常唾液腺cDNAをもちいたものでは予想される塩基数(530bp)のバンドが得られた。この産物で2nd-PCRをおこなった後、新たに設計した、BamHIおよびHindIIIサイトを末端に含むプライマーでnested-PCRをおこなった。 3.nested-PCRでは、予想されたサイズのバンドが得られたので、これを切り出し精製した。この精製物を、制限酵素切断により目的のcDNAであるかどうか確認した。制限酵素は、切断箇所が一カ所のみと推定されるPvuIIをもちいた。その結果、予想されるサイズの2本のバンド(282bpおよび235bp)が得られた。 以上の結果から、正常唾液腺cDNAをもちいたHSPGドメイン1のcDNAの合成が確認された。このcDNAをもちいることにより、ドメイン1蛋白質の合成、ドメイン1認識プローブを作製する準備が完了した。現在、プローブを作製中で、今後、HSPG機能解析実験に有用な手段となることが期待される。
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