ラット顎関節滑膜を研究対象とし、免疫細胞化学的手法、免疫電子顕微鏡法および共焦点レーザー顕微鏡法を用いて以下のような所見を得た。 1.基底膜の主要構成成分であるラミニンの特異抗体を用いて、ラット顎関節滑膜を免疫染色したところ、ある種の滑膜紬胞の外周に強いラミニンの免疫反応が観察された。この陽性細胞を免疫電顕法で観察すると、細胞内に電子密度の高い分泌顆粒、粗面小胞体、ゴルジ装置が観察され、この細胞は滑膜B細胞と同定された。さらに、この基底膜はしばしば断裂しており、さらに基底膜に面して多数のタコ壷様構造が観察された。 2.低分子heat shock protein(HSP)のひとつであるHsp25の特異抗体を用いて、ラット顎関節滑膜を免疫染色したところ、ある種の滑膜細胞が強い陽性反応を示した。レーザー顕微鏡で観察すると、この陽性細胞はその細胞質の形態から2種に分けられた。すなわち、長く太い突起をもつものと短いが関節腔に到達すると、関節腔を裏打ちするように横走する突起ももつ細胞である。後者の細胞はその突起により関節腔と滑膜下組織を境していた。この細胞は電子密度の高い分泌顆粒、粗面小胞体、ゴルジ装置をもつという微細構造学的特徴から滑膜B細胞であることが明らかにされ、Hsp25が滑膜B細胞の有用なマーカー物質であることが示された。さらに、血管内皮細胞、肥大軟骨細胞層および成熟軟骨細胞層の軟骨細胞、関節円板内に存在する軟骨細胞様細胞もHsp25陽性を示した。 なお、これら一連の研究成果を得るのに、本研究補助金で購入した画像解析用パーソナルコンピューターが活用された。
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