研究概要 |
伴性無汗型外胚葉異形成症(Ectodermal dysplasia,anhidrotic : EDA)は、150以上の臨床症状を伴う遺伝性疾患であるが、主にまばらな頭髪、汗腺の欠失による発汗不能、歯の欠失、の3症状によって特徴づけられる。EDAにおける歯の欠失には、数歯による全歯まで変異があり、さらに歯の形やサイズの異常を伴うことが多い。本研究では歯の発生機構の解明の一環として、マウスにおける原因遺伝子 Ta の翻訳産物の機能を解析した。 (1)シグナルパスウェイ下流にあると考えられる遺伝子の検討 EGFレセプター、β-カテニン、E-カドヘリン、P-カドヘリン、c-Metの5つをEda/Taの翻訳産物のシグナルパスウェイ下流にある関連分子の候補とし、こられの歯胚における発現パターンを調べた。解析は、Ta欠損動物、(=EDA疾患モデル動物)であるTabbyマウスと野生型マウスを用い、市販抗体による免疫染色とDIGプローブによる in situ hybridization で行なった。帽状期以降で変化のあるものも見られたが、Tabby特有の形態を成す帽状期以前の段階で、はっきりとした差のあるものは、現時点では見つかっていない(一部はDevelop.Biol.216:521-534(1999)にて発表)。現在、さらに候補を増やして探索を継続している。 (2)培養下でのレスキュー実験 胎齢14日の正常マウスから下顎第1臼歯を摘出してTrowell型の培養を14-21日を行い、その間、Taを特異的に翻訳阻害できるアンチセンスDNAを加えた。これによって歯胚の咬頭形成が阻害されたので、EGF,TGF-α,KGF,FGF,HGF,NGFをアンチセンス存在下の歯胚培養系に加え、レスキュー実験を行った。EGFで若干のレスキューが認められたが、間接的なレスキューとも考えられ検証中である。
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