研究概要 |
1)象牙質特異的に遺伝子を発現調節することを目的に、象牙芽細胞に特異的に発現する非コラーゲン蛋白質ラット dentin sialoprotein をコードする遺伝子Dspの5'上流の制御領域を単離し塩基配列を決定した。この領域の象牙質特異的な発現を調べるためにLacZを下流に連結したトランスジェニックマウスを作製したところ、胎生期後半から出生後まで象牙質特異的にLacZを発現させることができた。さらに組織学的な解析により象牙芽細胞に特異的にLacZが発現していることが判明した。この制御領域を用いることで象牙芽細胞に特異的に歯の分化に関与する遺伝子の機能を調べることが可能になった。 2)象牙芽細胞におけるBMPシグナルの機能を明らかにするために、歯で広く発現するBMP2,4の受容体のActivin like kinase(ALK3)のキナーゼ領域を取り除いたドミナントネガテブ型の遺伝子をDspの制御領域に連結し象牙芽細胞に強制的に発現させた。現在4系統のトランスジェニックマウスが得られている。 3)トランスジェニックマウスよりRNAを回収し導入遺伝子が歯牙領域で発現しているかを検討したところ、正常なALK3遺伝子のみならず、ドミナントネガテブ型のALK3遺伝子の発現も確認された。現在は、導入遺伝子の蛋白での発現の有無を検討中である。 4)導入遺伝子をヘテロに有するマウスの歯牙には明かな異常が認めらなかった。従来ドミナントネガテブ型の遺子はその正常遺伝子との発現の量的な点が重要であると考えられている。従って、導入遺伝子をホモに有するマウスを作成し解析することでALK3遺伝子の象牙芽細胞での機能を明らかにできると考えている。 5)培養系を用いた歯の発生誘導系を確立するために、まず我々が作成したDsp-LacZマウスの歯胚を用いて歯芽培養を行った。培養歯牙においてもLacZが発現することが明らかになった。
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