1.蛍光顕微測光システムを使って味刺激を行い味蕾内細胞の細胞内カルシウム濃度変化を測定した。ヒト及びスナネズミの味蕾を含む舌上皮に蛍光色素Fura2を取り込ませて比較検討した。 2.ヒト茸状乳頭の味蕾の応答:異なる味蕾においてサッカリンおよびショ糖の味刺激による細胞内カルシウム濃度変化の違いについて調べた。サッカリンでは7個の味蕾の内、1個(23%)で細胞内カルシウム濃度の上昇が観察され、ショ糖では10個の内、1個(10%)で細胞内カルシウム濃度の上昇が観察された。 3.スナネズミ茸状乳頭の味蕾の応答:ヒトと同様、異なる味蕾においてサッカリンおよびショ糖の味刺激による細胞内カルシウム濃度変化の違いについて調べた。サッカリンでは35個の味蕾の内、14個(40%)で細胞内カルシウム濃度の上昇が観察され、ショ糖では10個の内、5個(50%)で細胞内カルシウム濃度の上昇が観察された。 4.今回の結果からヒトおよびスナネズミともにサッカリンとショ糖により細胞内カルシウム濃度の上昇が確認された。サッカリンによる細胞内カルシウム濃度の上昇はIP_3の濃度上昇によると考えられるが、ショ糖による細胞内カルシウム濃度上昇は、cAMP濃度上昇によって二次的にCa^<2+>チャネルが活性化されたために引き起こされたものと考えられる。またヒトとスナネズミの細胞内カルシウム濃度の上昇が見られる味蕾の出現頻度には大きな違いがあり、スナネズミの甘味感受性はヒトのそれより高い傾向があることが示された。
|