1.蛍光顕微測光システムを使って前年まで行なっていた甘味に加え、塩味刺激を行い味蕾内細胞の細胞内カルシウム濃度変化を測定した。ヒト及びスナネズミの味蕾を含む舌上皮に蛍光色素Fura2を取り込ませて比較検討した。 2.ヒト茸状乳頭の味蕾の答:異なる味蕾における甘味及び塩味刺激による細胞内カルシウム濃度変化の違いについて調べた。サッカリンでは味蕾7個中1個(23%)、ショ糖では味蕾10個中1個(10%)、NaClでは味蕾9個中3個(33%)で細胞内カルシウム濃度の上昇が観察された。 3.スナネズミ茸状乳頭の味蕾の応答:ヒトと同様、異なる味蕾における甘味及び塩味刺激による細胞内カルシウム濃度変化の違いについて調べた。サッカリンでは味蕾46個中19個(41%)、ショ糖では味蕾22個中10個(45%)、NaClでは味蕾13個中4個(31%)で細胞内カルシウム濃度の上昇が観察された。 4.これまでの結果からヒトおよびスナネズミともに甘味であるサッカリンとショ糖及び塩味であるNaClにより細胞内カルシウム濃度の上昇が確認された。サッカリンによる細胞内カルシウム濃度の上昇はIP_3の濃度上昇によると考えられるが、ショ糖及びNaClによる細胞内カルシウム濃度上昇は、二次的にCa^<2+>チャネルが活性化されたために引き起こされたものと考えられる。またヒトとスナネズミの細胞内カルシウム濃度の上昇が見られる味蕾の出現頻度は甘味では大きく異なり、スナネズミの甘味感受性はヒトのそれより高い傾向があるが、塩味感受性はヒトとスナネズミは類似している可能性が示唆された。
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