歯の発生に対してのHGFの関与を検討するために、HGF量をELISA法で測定したところ、歯小嚢中は、年齢に関係なく平均約0.6pg/μg proteinの値を示したのに対し、歯乳頭中ではその約4倍以上の1.6-4.0pg/μg proteinの値を示し、さらに年齢依存的にその値が減少した。次に歯乳頭から調製した培養線維芽細胞のHGF産生能を調べたところ、年齢的な差は認められなかった。さらに歯乳頭培養線維芽細胞を炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor-αとinterleukin-1 αにより刺激すると、HGF産生は年齢依存的に上昇した。これらの結果は、HGFが歯の発生だけでなく、歯髄の成熟にも関与していることを示唆する。さらに、そのメカニズムを検討したところ、歯乳頭、及び歯乳頭培養線維芽細胞でのHGFのmRNA発現が、RT-PCR法で確認され、次に、HGFの受容体であるc-Metの発現を検討してみたところ、歯小嚢だけでなく間葉系の歯乳頭、及び歯乳頭培養線維芽細胞でもc-MetのmRNA発現が認められた。この結果から、新たに間葉系の細胞にもc-Metが発現していることが示唆されたが、それぞれに上皮系の細胞が混入している可能性があるため、免疫組織化学染色法によりc-Metの発現を確認したところ、ほとんどの歯乳頭培養線維芽細胞にc-Metの発現が認められ、歯乳頭組織の間葉系の細胞にも発現が認められた。以上の結果は、HGFが歯の発生過程に関わっていることを示唆するだけでなく、HGFが新たに間葉系の細胞にも作用していることを示唆しており、研究結果として発表した。
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