平成11年度に歯の発生において、歯乳頭中のHGFタンパク量が年齢依存的にその値が減少することと、歯乳頭培養線維芽細胞を炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor-αとinterle ukin-1αにより刺激すると、HGF産生は年齢依存的に上昇することを明らかにした。また、歯乳頭、及び歯乳頭培養線維芽細胞でHGF受容体のc-MetのmRNA発現が、RT-PCR法で確認され、歯小嚢だけでなく新たに間葉系の歯乳頭、及び歯乳頭培養線維芽細胞でもc-MetのmRNA発現が認められた。平成12年度では歯乳頭組織とその培養線維芽細胞に上皮系の細胞が混入している可能性を除くためと、歯乳頭培養線維芽細胞でのHGFによるメカニズムを検討した。免疫組織化学染色法、及びin situ hybridization法によりc-Metの発現を確認したところ、ほとんどの歯乳頭培養線維芽細胞にc-Metの発現が認められただけでなく、affinity cross-linking法により細胞膜上のc-MetがHGFと結合可能なことが示され、新たに歯乳頭組織の間葉系の細胞にもc-Met発現が認められた。さらにHGFによりどのような生理作用を持つか検討したところ、歯乳頭培養線維芽細胞の培地に組換え体HGFを添加することにより、2ng/mlの濃度でDNA合成促進が認められた。さらに、血管新生因子であるvascular endothelial growth factorの産生量も、HGF刺激により濃度依存的に上昇した。以上の結果は、HGFが歯の発生過程に関わっているだけでなく、HGFが新たに間葉系の細胞にも作用していることを示唆しており、これらの結果は、HGFが歯の発生だけでなく、歯髄の成熟とオートクリン的に歯髄の血管形成に関与する可能性が示唆され、研究結果として発表した。
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