Actinobacillus actinomycetemcomitansの血清型特異多糖遺伝子群を指標として血清型を迅速かつ簡便に決定するために、各血清型を規定している遺伝子を単離し、DNAの塩基配列を決定しなければならない。本研究の一年目では、まだ血清型特異多糖合成遺伝子が単離されていない血清型a、d、eの株より、目的の遺伝子群をクローン化し、その構造を決定することを目標とした。すでに同遺伝子群が得られている血清型bおよびcの情報を基に、血清型d(IDH781株)およびe(IDH1705株)の多糖抗原合成遺伝子群を同定することができた。IDH1705株の血清型e特異多糖の合成に必要な遺伝子群が血清型eに特異的で、他の血清型の株の染色体DNA上には存在しないことを明らかにできた。血清型eの多糖抗原遺伝子については、Biochim.Biophys.Acta 1489(457-461)に報告した。血清型dについても、その構造の解析がほぼ終了した。血清型aの多糖抗原遺伝子に関しては、クローン化が難航しており、まだ成功していない。各血清型特異多糖の遺伝子群の構造を明らかにした後、それぞれの血清型にのみ存在する遺伝子配列を得るのが次の段階であり、そのために各遺伝子の機能を解明すれば、血清型に特異的に存在する遺伝子の決定が容易になる。本年は、血清型cにのみ存在するL-taloseを合成する遺伝子を同定し、この遺伝子が血清型cの株にのみ見られるものであることを明らかにした。(J.Biol.Chem.印刷中)。この一年間で、血清型b、c、d、eに特異的な遺伝子を決定することができた。今後、残る血清型aに特異的に存在する遺伝子配列を決定し、それらの情報を用いてPCR法による簡便な血清型決定の条件を検討する予定である。
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